「まさかうちの親族に限ってもめるはずがない」と思っている方が多い
かもしれませんが、財産をめぐって親族の関係が悪化したりすることは
少なくありません。
特に、家族関係が複雑であったり、相続人の数が多い場合や自宅以外
にこれといった財産がない場合などは、さらに争いになる可能性が高く
なります。
親族の間で争いごとが起こらないよう、事前に配慮しておくことが必要かもしれません。
相続というのは、被相続人(死亡した人)の権利や義務を相続人が受け継ぐことです。
※相続はプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含むすべての財産を受け継ぐので注意が必要です。
(相続財産の調査の結果、マイナスの財産が多いときは相続放棄なども考える必要があります)
相続人が何人かいるときには、相続財産(遺産)はそれぞれの相続人の共有(みんなのもの)になっているので、その遺産を各相続人のものにするために分割します。
【遺産の分割】
遺産は遺言書があればその通りに分割し、遺言書がなければ法定相続分に従うか、又は相続人全員でどのように分割するかを協議します。
相続人の間で遺産をどのように分割するかを決めたら、あとで問題が起こらないように書面(遺産分割協議書)にしておくことが望ましいです。
遺言と聞くと縁起でもない、財産のある人だけが書くものだなんて連想される方が多いかも知れません。
しかし、ご家族へ感謝の気持ちを伝えると共に、相続を円満に解決できる方法は、実は遺言しかありません。
遺言を作成することで無駄な相続争いを防ぐことができ、ご家族への負担を軽減することができます。
また、遺言では財産争いの予防と同時に、直接は伝えられない感謝の気持ち等をご家族に伝えることもできます。
【遺言の意義】
“遺言”とは、元気で生きていくことを前提に、もし自分に万が一のことがあった場合に大切な人たちが生活に困らないように、また無用な争いに巻き込まれることの無いように備えておくための「愛情のしるし」であると思います。
そういった財産争い予防のために、今までの感謝の気持ちや伝えることのできなかった想いと共に、あなたの想いやりとしてしっかりと形にのこしておきましょう。
※ 遺言の形式は法律によって厳格に定められており、この定める方式に従わない遺言は無効となります。
エンディングノートとは、人生の節目の時期に、①今までの人生や思い出などの自分の歴史、②介護や医療など、自分の生き方についての希望、③お墓のことや納骨、葬儀の方法など自分の死後についての願望、遺言書の有無や財産目録など、④大切な人たちへの想いやメッセージなどを書き記したもので、遺言書の内容を補完すると同時に、日頃の自分を見つめなおして、さらに前向きに生きていくためのものです。
自分の過去や思いを振り返り、見つめなおすことにより、新たな人生を歩みだす第一歩になるでしょう。
【エンディングノートの役割】
● 備忘録として
お世話になった方の連絡先や、大事なものの保管場所など、
あなた自身ですら忘れてしまう可能性のある情報を記入して
ください。
また、資産に関する項目は、遺言書を作る際にも役立つでしょう。
● メッセージとして
自分の生きた証 (生い立ちや趣味、思い出) など、あなたの考えや気持ちを知りたいと思う大切な人のために、メッセージを残し伝えることがとても重要です。
● 希望を伝えるために
ご自身に万が一のことがあった場合に、周りの方や残された方が判断に困らないように、あらかじめ自分の意思を表示しておきましょう (例えば、臓器提供の意思の有無、延命治療を望むか否か、お葬式に呼んでほしい人、呼んでほしくない人のリストなど)。
尊厳死宣言書(リビングウィル)とは、無意味な延命措置を停止し、人として尊厳ある、心身ともに安らかな死を迎え入れるために元気なうちにあなたの気持ちを伝える書面です。
現在の医療技術による不治、末期、回復不能な状態での延命措置を拒否することを宣言するためのものです。
【書面で宣言することのできる内容】
● 延命措置の停止
● 苦痛を和らげる処置は最大限利用
● 植物状態での生命維持措置の停止
最近では、尊厳死宣言書を作成される方が増加しています。
自分の最期の迎え方(終末期の医療措置)の選択の意思をしっかりと伝えるため、また、その意思を実現してくれた医師や最期まで看てくれた家族に負担をかけないためには、尊厳死宣言書を作成されることは有効な手段となります。
成年後見制度とは、認知症、知的障がい、精神障がいなどの
理由で判断能力の不十分な方々が、安心して日常生活を送れる
ようにするための制度です。
判断能力が低下すると、介護サービスを利用する際の契約や、
財産の管理などを自分でおこなうことが困難になったり、悪徳
商法の被害にあわないかと不安になったりすることがあります。
このような方々の為に、後見人が代わりに契約をしたり財産を管理したりと、暮らしの保護・支援をしていきます。
● 法定後見制度 ~判断能力が低下している方を支援する制度~
既に判断能力が低下している場合に、本人や配偶者、4親等内の親族などの請求により、本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて、家庭裁判所が適切な援助者を選任します。
選ばれた援助者が、本人に代わって契約などの法律行為や財産管理など必要な支援をします。
● 任意後見制度 ~高齢をむかえる自分のために準備する制度~
判断能力があるうちに、将来の代理人(任意後見受任者)を定め、自分の判断能力が不十分になった場合に備えて、任意後見契約を公正証書で結んでおきます。
将来自分がどんな生活がしたいかなど、自分の将来を自分で決めることができます。